残像

2005年4月9日
モノにも、それぞれの思い出ってあるんだろうか。
私たちが勝手にそれと結びつけて記憶するのとは違って、そのモノが自分で持っている思い出。
土曜日にも授業が入っている私は、大学内を歩いてこんなことを思った。
 
彼と初めて会った日に座った、木の根元のベンチ。
何回か待ち合わせをした、階段の踊り場。
いっしょにお昼を食べて、告白もされた、広いグラウンド。
早足の彼に一生懸命追いつこうと歩いた、たくさんの道。
 
どれを見るときも、当時の2人の姿が目に浮かぶようだった。
私は彼の横にいて、2人を客観的に見るなんてことは出来ないはずなのに。
なぜか、2人分の表情や仕草が見えてくる。
 
広島に原爆が落とされたとき、強い光が石に人間の影を焼き付けたように、光をなくした私の目は思い出の場所を眺め、幸せな風景をそれらの場所に焼き付けようとしている。
 
場所やモノにも、思い出を持つ力があると信じて。
彼らが、私と彼の時間を覚えていてくれるように。

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